2026/10/06 00:00


第一章 眠れない夜

「先生、眠れないんです」

その一言から、私の長い治療生活は始まった。

40代になった頃、仕事が急に忙しくなった。責任のある立場になり、職場の人間関係にも神経を使うようになった。

家に帰っても仕事のことが頭から離れない。

布団に入る。

目を閉じる。

しかし頭の中では、昼間の出来事が何度も再生される。

「あの判断で良かったのか」

「明日の会議はどうしよう」

時計を見る。

午前1時。

また見る。

午前3時。

そして、ほとんど眠れないまま朝を迎える。

そんな日が続いた。

身体は重く、頭には霧がかかったようだった。

とうとう私は精神科の門を叩いた。

医師は私の話を聞き、薬を処方した。

「まずは睡眠を取ることが大切です」

私は安心した。

その夜、久しぶりに眠ることができた。

朝起きたとき、世界が違って見えた。

「薬ってすごいんだ」

そう思った。

このときの私は、薬が自分を救ってくれたと思っていた。

そして、それはある意味では間違いではなかった。

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